川根本町|普段使いからインテリアまで!高機能な「茶箱」の魅力
静岡県は全国でも有数のお茶産地として有名ですが、お茶に寄り添う形で発展していた産業があることをご存知でしょうか。
「茶箱」という名を一度は聞いたことがあるかも知れません。
おそらく多くの方が、お茶を運ぶ入れ物として使われていたという認識ですよね。
実は、湿気に弱い茶葉を品質や鮮度を維持しながら、海外までの道のりを支えていた優れものだったのです。
時代は変われども、現在の生活の中でも活躍の場面が多いにあるとのこと。
馴染みがあるようで、馴染みのなかった茶箱の魅力を改めて掘り下げてみたいと思います。
このページの目次
伝統を受け継ぐ茶箱専門店「前田工房」
お話を伺ったのは、川根本町桑野山に工場を構える茶箱専門店「前田工房」さん。
茶箱の製造は現在全国で数軒しか残っておらず、静岡でも受け継がれてきた貴重な伝統産業なのです。熟練の茶箱職人である前田宥氏から技術を受け継ぎ、次世代に繋げるべく奮闘されています。
お茶の海外輸出を支えた茶箱
茶箱の歴史
江戸時代末期からお茶の輸出用に作られた入れ物が茶箱の始まりと云われており、輸出品としてお茶の価値が高かったことや清水港の存在など、静岡県には様々な好条件が揃っていました。
明治初期には全国で80軒の茶箱製造が行われ、静岡でも盛んであったとのこと。
お茶や繭が経済を潤した需要な財源であったことから、茶箱も時代を支えた大きな存在だったんですね。
川根本町での製造もおよそ100年以上の歴史があります。
その後、技術の進歩により、昭和30〜40年代にかけて窒素充填のダンボールを使用した梱包が主流になっていきます。
インテリア茶箱として新たな文化が誕生
茶箱本来の役割が途絶えたように思われますが、まさに芸が身を助くという形で現在まで道が繋がっていくのです。
茶箱には杉材が使用され、内側にトタンを施すことで防虫や防湿、防酸化などの優れた機能を発揮します。
信頼できる優秀な保管箱になるのです。
これまで海外輸出用に海を渡っていた茶箱は、保管箱としての機能性の高さから海外の奥様たちの目に留まります。
そこで機能性を活かしつつ、美しい生地や装飾で彩られた新しい視点を持った茶箱の文化が生み出されます。
ご自宅の雰囲気やお好みで多様なデザインが選べるインテリア茶箱です。
インテリア茶箱が日本に逆輸入
ファッション性やデザイン性のある茶箱が、時間を掛けて日本に逆輸入する形で広まります。
茶箱を後世に受け継ぐために設立された有限会社インテリア茶箱クラブの尽力により、改めて茶箱本来の価値も見出され、現在の前田工房の技術継承にも繋がっているのです。
インテリア茶箱クラブと前田工房との二人三脚で、茶箱の新たな可能性を広げていこうという取り組みが日々行われています。
「必要としてくださる方に向け、未来に繋げていきたい」と代表取締役の薗田さんが仰ってくれました。
暮らしを支える茶箱の底力
衣類はもちろん、お米やコーヒー、乾物など、カビや湿気、虫を嫌う食品、カメラ、革製品など幅広く対応。
乾燥したものをそのままの状態で長くキープしてくれるため、劣化しないように大切に保管したいものを入れるのがおすすめとのこと。
丁寧でしっかりとした作りは100年保つとも云われており、歴史ある工芸品ながら今のサステナブルやSDGsの考え方に通じるものがあります。
また、製造過程の各職人さんたちがプライドと心を込めてモノづくりに当たっているのも魅力の一つです。
一つひとつ丁寧に作り出す職人の技
パーツ作成
茶箱作りは、1枚の杉板の節目や木目、色合いを確認してから完成形を思い描きつつ、各パーツに切り分けていく繊細な工程から始まります。
1つの茶箱で使われる杉材は14パーツ。
大きさは全部で20種類。
歪み調整とカンナがけ
美しい仕上がりを想像しながら歪みなども整えていきます。
続いて、一つひとつ手作業で丁寧にカンナがけをしていきます。
組み立て・トタン
組み立てや成形を経て、大事なのがトタンの施し。
これで、密封状態が保てるようになるため、慎重な作業が求められます。
前田工房ではトタンの継ぎ目には、ほぼ錫100%のはんだ棒を使用しているとのこと。
環境に優しい茶箱づくり
お客様はもちろんのこと、職人も含め安心、安全なやさしい茶箱づくりを目指していらっしゃいます。ちなみに、箱の強度を上げるため継ぎ目に専用の和紙が貼られていますが、のりに使用する米粉でんぷんは余ったものをスズメが食べにくるほど環境にやさしいのです。
安心・安全をめざして
お客様に安全で長く使ってもらえるよう心を込めながら、次の工程の職人が分かりやすいようリレーのように作業を繋げていくのが前田工房のポリシー。
何かあった時は全員で対策を考えるのだそうです。
また、各パートの職人さんたちが一つひとつ丁寧な作業を積み重ねていくため、1日に製作される数は15個が目安。
プロの目で厳しくチェックしながら一つの茶箱が出来上がっていくのです。
令和以降も活用を願って…伝統工芸品を作る「前田工房」の想い
ご年配層は茶箱の存在や機能をご存知かも知れませんが、若い世代にこそ知ってほしいと話す薗田代表。
未来に必要なものだからこそ茶箱の良さを知ってもらい、実際に取って使ってもらうことが大事だと仰います。
前田工房では日常に溶け込みやすいよう、日々使えることを考えた様々な商品を生み出しています。
こだわりでもある樹齢30年以上の川根本町産杉材が美しいシンプルな素茶箱をはじめ、和紙で装飾された雅なデザインの和紙茶箱やオリジナルの絵柄を入れられるレーザー茶箱、収納を兼ね備えた茶箱いすなどバリエーションは豊富。
ノスタルジックな逸品が自宅で活躍
さらに人気が高いのが、茶箱本来の役割を担っていた輸出用時代の復刻版ラベルが貼られた蘭字茶箱。色味やデザインを忠実に再現したノスタルジックな逸品です。
当時に思いを馳せながら、ご自身の大事なものをおしゃれに保管できます。
素茶箱 | サイズ | 価格 |
1KS | 内寸19×12.5×10 | 7,150円~ |
60K | 内寸85×40×48 | 35,420円 |
Nori M | 内寸23×20×14.5 | 8,690円 |
Nori M(内寸23×20×14.5)がちょうど5kgのお米がぴったり入る大きさです。
ちなみに唐辛子や乾燥剤のようなものは一切入れなくて大丈夫とのこと!
逞しいです。
ご紹介の「前田工房」詳細情報
工場見学・アクセス
住所 | <桑野山工場> 静岡県榛原郡川根本町桑野山424-6 木の駅かわね敷地内 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
工場見学 | ※要予約 料金:無料 所要時間:20~30分(目安) 見学人数:5人前後が最適(上限8人) |
定休日 | 土・日・祝日 |
電話/FAX | 0547-59-2210 |
駐車場 | あり |
アクセス | 電車 大井川鐡道「千頭駅」から徒歩約30分 車 大井川鐡道「千頭駅」から車で約5分 |
販売 | 「前田工房ネットショップ」 https://chabako.theshop.jp/ |
会社住所 | 静岡県榛原郡川根本町千頭83 |
HP | https://kawanechabako.jp/ |
https://www.instagram.com/chabako_maedakobo |
※本記事は2024年3月時点での情報です。
憧れから自分の生活の中に‥
筆者自身、茶箱の存在はとても興味があり、特に復刻版ラベルは子供の頃からの憧れでした。
今まで手が出せなかったのは、やはり経済的な理由。
気軽にできる買い物ではないと思っていたのです。
今回見学させてもらい、制作過程や背景、優れた機能を知ることで、その憂いは飛んで行ってしまいました。
本当に大事なものを守れる茶箱。
先人が残してくれた技術や文化を繋ぐ意味でも、生活に良いものを取り入れていきたいなと思いました。
時代が見放さなかった茶箱の価値を、私たちが改めて見直していくことも大事だと感じます。
購入のご希望は、ネットショップより受け付けています。
まずは一つ・・・新たな気持ちで茶箱ライフを始めてみませんか。
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