静岡市|家康公ゆかりの地「清見寺」は心を和ませられる穏やかな空間
緑豊かな山林を背に、目の前には美しい駿河湾を望められる場所。
臨済宗妙心寺派の寺院として、清水区興津に歴史的由緒ある清見寺(せいけんじ)が佇んでいます。
およそ1300年以上前から続いており、室町時代や戦国時代をはじめ現在に至るまで数多くの歴史的人物の拠り所とされてきた深い時間の流れがあります。
歴史的人物と清見寺の関係
清見関と呼ばれた関所が今の興津に設置され、関所や土地の平安を願い仏堂が建立されたのが始まり。足利尊氏がこよなく崇敬し、今川氏から外護を受けるなど日本でも有数の寺とされていたのです。
戦国時代には地の利を活かした要塞として時勢に翻弄されることもありました。
清見寺住職が徳川家康公の人質時代の教育を務めたり、皇室の方々が御来訪されたりなど、時代と共に歴史を刻んだ清見寺。
当時を振り返りながらじっくりと散策してみたいと思います。
寺院としての風格を感じさせる山門
総門を見上げながら階段を登ります。
ザワザワとした現実が総門を境に一区切りつくような感覚です。
静鉄電車が通り過ぎる線路の上の橋を歩いていくと・・・。
厳かな山門がそびえたっています。
さらに山門を丁寧にくぐると、時代を超越するような心地よさを体感。
釘が一本も使われていないため、木材の重厚感がひときわ迫力を感じさせます。
家康公お手植えの臥龍梅
お酒好きの方は、臥龍梅(がりゅうばい)という言葉に聞き覚えがあるかもしれませんね。
地を這う龍の形をなぞらえて臥龍と呼ばれますが、転じて能力がありながら未だ世に出ず隠れている大人物のことを指す場合もあります。
本堂に向かう石畳横の臥龍梅は、清見寺ができた最初のきっかけである清見関という関所の梅を、徳川家康公が訪れた際に接樹したものと云われています。
その日から400年以上、清見寺の庭で毎年美しい梅を咲かせているのです。
例年、少し遅咲きの2月から3月に掛けて見頃となるようですよ。
美しい音色で心を浄化させる鐘楼
1314年に鋳造された梵鐘。
豊臣秀吉が伊豆韮山城攻伐の際に鳴らしたとも云われており、除夜の鐘として一年の清めとなる音を響かせてくれていました。
現在は諸事情のため開催されておらず、音色を耳にできないのが非常に残念です。
清らかで凛とした空間・大方丈
受付を通り中へ進むと、十一面観世音菩薩の坐像が安置された内陣がお目見え。
隅々まで丁寧に手入れされている凛とした美しさが目を惹きます。
窓から見える臥龍梅の後ろ姿で気分がほっこり。
来世でも縁が結ばれるとの仏の教えに導いてもらえるよう、仏前結婚式も執り行われているようですよ。
朝鮮通信使の遺した扁額で歴史を知る
頭上の梁を見上げると、どれも歴史的価値がありそうな扁額が掲げられています。
その中で興味深いのは朝鮮通信使が書かれたとされる「詩文」。
室町から江戸時代にかけて将軍就任のお祝いのため、朝鮮より送られた使節団のことを朝鮮通信使と云います。
京都に降り立ち、徒歩で江戸を目指すのですが、12回訪れた内の9回も清見寺に立ち寄っているのです。
ちょうど12月初旬まで清水区港町にあるフェルケール博物館にて「朝鮮通信使と清見寺」という企画展が開催されています。
企画展を拝見すると面白いのが、皆故郷に思いを馳せながらも清見寺の美しさや居心地の良さに感銘を受けている様子が文章に残されているのです。
日本の長い歴史に寄り添ってきた清見寺ならではの価値が伺えます。
フェルケール博物館企画展「朝鮮通信使と清見寺」
開催日 | 2023年10月7日(金)〜12月3日(日) |
開催時間 | 9:30~16:30 |
当時の記憶を今に残す血天井
当時の記録として目を背けられないのが血天井です。
源頼朝に支えていた梶原景時が一族と共に出奔した際に、清見関で一戦交えた時の古材を使用しているとのこと。
部屋の前に立つと若干、足がすくむような怖さを感じました。
研鑽を重ねていた幼少時代・家康公手習いの間
家康公が今川氏の人質として駿府に滞在していた際に、清見寺住職より学んでいた空間を今に伝えています。
本堂の改築はされていますが、柱や欄間、床などは当時のままとのこと。
太平の世を築いた、まさに臥龍の人材・徳川家康公の幼少期に思いを馳せられます。
和やかな心を体感できる名勝庭園
細めの廊下を歩み進めるとなんとも形容し難い、落ち着いた池泉鑑賞式庭園が広がっています。
丁寧に整えられた美しい庭が、背後にそびえる山林の迫力をしっかりと受け止め、一つの景色を生み出しています。
家康公の意向を取り入れて、江戸時代初期に山本道斎によって作庭された国指定文化財庭園です。
歴史的瞬間を垣間見る玉座の間
1869年明治天皇が立ち寄ったとされる玉座の間は、東京遷都の際の道中であったと伝えられています。つまり政治の中心が東京になるという、今の時代に繋ぐための貴重な瞬間にも清見寺が存在していたんですね。
静岡市指定文化財として、歴史の在りようを感じさせてくれます。
安らぎのひとときと穏やかな景色を眺める潮音閣
本堂をぐるりと周り、2階に上がる階段を昇っていきます。
足を踏み入れると、陽の光が差し込んだ景色を大パノラマで一望できる贅沢な眺め!
駿河湾や日本平、伊豆の山々と合わせて、時折顔を出す静鉄電車が何とも言えない風情を生み出しています。
仏殿や五百羅漢像など本殿までのアプローチを楽しむ
本堂や臥龍梅、鐘楼も2階から眺めるとまた違った雰囲気を楽しめます。
その他にも、山門から続くお庭には仏殿や島崎藤村の小説にも登場する五百羅漢石像など、清見寺と関わりのある様々な石碑が立ち並んでいます。
ご紹介の「清見寺」詳細情報
臨済宗妙心寺派 清見寺
正式名称 | 巨鼇山清見興国禅寺 |
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住所 | 静岡市清水区興津清見寺町418-1 |
電話 | 054-369-0028 |
拝観時間 | 8:30~16:30 |
定休日 | 無休 |
拝観料 | 大人300円 中高生200円 小学生100円 |
駐車場 | 無料駐車場あり ※50台分 |
アクセス | 電車 JR興津駅より徒歩約15分 車 東名「清水IC」より約10分 |
公式HP | https://seikenji.com/index.html |
フェルケール博物館(一般社団法人清水港湾博物館)
(一般社団法人清水港湾博物館)
住所 | 静岡県静岡市清水区港町2-8-11 |
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電話 | 054-352-8060 |
開館時間 | 9:30~16:30 |
定休日 | 月曜 ※祝祭日、振替休日の場合は開館 |
拝観料 | 大人400円 中高生300円 小学生200円 ※土曜日と「子供の日」「海の日」は小中学生無料 |
駐車場 | 無料駐車場あり |
アクセス | バス JR清水駅または静鉄「新清水駅」→静鉄バス三保方面行き乗車約5分→「波止場フェルケール博物館」下車すぐ 車 東名「清水IC」より約10分 |
HP | https://www.verkehr-museum.jp/ |
自分を見つめ直せる穏やかな時間と空間
清見寺に足を踏み入れると温かで穏やかな空気に包まれ、頭の雑念がすっーと流れていくような不思議な感覚を覚えます。
日頃の喧騒から離れ、人に対して懐の深さを感じさせるとても居心地の良い場所です。
日頃のリセットや自分の心と対話したい時、ふらりと訪れてみると心の洗濯になるかもしれませんね。もちろん、歴史的価値も高い場所ですので、フェルケール博物館の企画展と併せて歴史を学んでみるのもおすすめですよ。
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