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静岡市|静岡の歴史と共に受け継がれるやきもの「賤機焼」

賤機焼(しずはたやき)

古くから日本でも盛んに作られてきたやきものは、美術品として高い価値のある物から日常使いの身近な物まで幅広い表情を見せてくれる存在です。
名のある産地で作られる代表として、有田焼や九谷焼、備前焼などはよく耳にする機会がありますよね。

静岡ではどうだろう?
島田市の志戸呂焼、森町の森山焼・・・と思い出したのが、静岡市の「賤機焼(しずはたやき)」。

名前を見聞きした覚えはありましたが、恥ずかしながら筆者にとって少し遠くの存在でした。
学びを深めるため、「賤機焼」秋果陶房の5代目 伍代春秋果(青島晴美)さんに詳しくお話を伺ってきました。

 

徳川家康公ゆかりのやきもの「鬼福」

賤機焼(しずはたやき)

静岡県知事指定郷土工芸品にも指定されている「賤機焼(しずはたやき)」には、代表的なデザインとして「鬼福」があります。

表面に優しい顔のお福が描かれ、裏面には立体的な鬼の顔が施されている独特なデザイン。
実はとても縁起の良いやきものとして多くの人々に愛用されているのです。

賤機焼の歴史

そもそも「賤機焼」の歴史は古く、その始まりにはとても面白いエピソードがあります。

織田信長の手によって室町幕府が滅亡した1573年のこと。
三方ヶ原の戦いにおいて敗れた徳川家康が浜松城に立て籠りました。

最後の一策が歴史を変えた!

侵攻する武田軍勢に囲まれ、窮地に立たされた家康軍が最後にある一策を投じます。
節分の時期ともあり、大太鼓を打ち鳴らして声高々に「鬼は外!福は内!」と叫び続けたのです。
これに驚いた武田軍は、家康軍の気迫と伏兵の危険を感じ早々に撤退していきます。

九死に一生を得た家康軍。
この時の家臣太田七郎右ヱ門が機転を効かせ、内に福面を描き、外に鬼瓦を模した三つ組の盃を家康公に献上したのです。

ことの他喜んだ家康公は、「賤機焼」の名を授け、代々製陶の業が受け継がれることになりました。

縁起物を受け継ぐ賤機焼

賤機焼(しずはたやき)

この三つ組の盃には、節分の吉祥と戦いの勝運を祝う意味が込められており、近年まで久能山東照宮の豆まき用の器として用いられていました。

途絶えてしまった期間もあるようですが、2015年の家康公四百年祭をきっかけに5代目伍代春秋果さんが新たに「鬼福」を献上。
以後、毎年古儀節分祭に足を運び、家康公との縁や由緒ある時代の流れを今に繋いでいるのです。

歴史に寄り添ってきた唯一無二のやきもの

賤機焼(しずはたやき)

また、1800年代に描かれた十返舎一九の東海道中膝栗毛に賤機焼のワードが登場しています。
静岡人には馴染みの深い弥次さん喜多さんの物語ですよね。

さらに、江戸時代に活躍した小林一茶の句「志づやじづ しづはた焼きに 汲め清水」と詠まれている賤機焼。

賤機焼(しずはたやき)

ボストン美術館の東洋館に収蔵品として写真が残されていた事実も、歴史的資料として価値がある点かも知れません。
時代と共に寄り添ってきた賤機焼は、稀有な存在として多くの人たちに愛されてきたことが伺えます。

安倍川の氾濫など、様々な理由から一度はその歴史が途絶えたことのある賤機焼。
明治時代に再興され、令和の時代に受け継がれていることは、静岡に住んでいる身としてとても光栄に思います。

もちろん、製陶され続けてきた代々の作家さんたちの努力の賜物でもあるのです。

日常に溶け込む縁起物

賤機焼(しずはたやき)

「鬼福は縁起物。歴史に立ち返って、それをちゃんと伝えていくのが自分の役目なのかな。」と控えめに伍代春秋果さんが話してくれました。

当初は三つ組の盃だけだった鬼福をコーヒーカップにしたり、ご飯茶碗や抹茶茶碗にしてみたりと工夫していく中で、今は箸置きが大人気とのこと。

「とにかく手間がかかるけど」と笑いながらも、ちっちゃな縁起物に気持ちを込めて一つひとつ表情の違う作品を作り出しています。

賤機焼(しずはたやき)

面白いのは、箸置きを片手でにぎにぎと握ることで鬼の角や顔の凹凸部分で手のひらが刺激されマッサージの気分を味わえるのです。
お客様によっては小さな巾着に箸置きを入れて、魔除けのために持ち歩いていらっしゃる方もいるのだそう。

昔ながらの原料や技術を大切にすること

賤機焼(しずはたやき)

また、今でも昔のやり方を踏襲していることも素敵な要素として挙げられます。
使用されている釉薬も手づくり、粘土も手づくりなのです。

今は代替の合成灰を使用した釉薬で済みますが、手づくりの釉薬にはが欠かせません。
その灰も灰汁を抜いた状態で使用する必要があります。

そこで登場するのが江戸時代に紺屋と呼ばれていた染物屋さん。
染液を作る材料として灰汁を使うため、自家製の灰を紺屋さんに預けておくのだそう。

自然の流れで行われていたSDGsのかたち

賤機焼(しずはたやき)

今は染物屋さんも減ってしまい、友人の染色家に頼むのみとなってしまったそうですが、灰汁が抜けた頃に灰を返してもらうという自然の循環ができていたんですね。
まさにSDGs。

現在は、工房にあったダルマストーブを用いて作り溜めた灰を使用し続けているそうです。

その灰も灰汁を抜くのに10年以上かかるとのこと。
「昔のやり方でどこまでできるか分からないけれど、ある限りはやっていきたい」と伍代春秋果さんが静かに語ってくれました。

そんな5代目の想いが込められた賤機焼を間近で見られるのが静岡市葵区柳町にあるギャラリー兼工房です。

自分のお気に入りを感性で選んでみる

賤機焼(しずはたやき)

「その場で見て触れてから選んで欲しい」という伍代春秋果さんの願いもあり、予約制で訪れることができます。

賤機焼(しずはたやき)

棚やテーブルにはたくさんの作品たちが置かれ、見応え充分の空間。
本当に一つひとつ違う表情があり、自分の好みや感覚が研ぎ澄まされていくような場所でした。

自分好みのぐい呑みづくりを体験

賤機焼(しずはたやき)

今回は一階の作業場に案内してもらい、実際に作品づくりを体験させてもらいました!
陶芸にものすごく興味があったので、わくわくと緊張が入り乱れた感覚でしたが、いざ始めてみるとかなり集中。

賤機焼(しずはたやき)

酒好きとしては外せないぐい呑みづくりにチャレンジしてみました。

1.仕上がっている粘土をちぎって、丸めて平くして底の土台を作る。
2.そこに紐状にした粘土を重ねて隙間を丁寧に埋めていく。
3.積み上げたところで全体を伸ばしていき、ぐい呑みらしい形に整える。
4.仕上げに高さのある部分をカットして整えてもらう。
5.釉薬の色を指定して作業完了。

こだわり具合にもよりますが、目安は1時間ほど。

賤機焼(しずはたやき)

賤機焼の体験料

体験料はぐい呑みが2つで3,300円(税込)、同じ値段で湯飲みもできます。
お茶碗やマグカップが4,400円(税込)。
お皿などその他のものは大きさに合わせて値段が変わります

仕上がりは天まかせ!

賤機焼(しずはたやき)

窯焼きはまとめて行われるため、直ぐに焼いてもらえることもあれば、一年以上お待たせしてしまうこともあるとのこと。
作っている間、どんな風になるのだろうか、こんな形にしてみたいとか色んな思いが湧き上がります。それだけに焼き上がりがすごく楽しみ!

土の感触や無心で作業する感覚、どうしたいの?と自分に問いかける時間。色んな感性が湧き上がる素敵な体験となりました。

今回ご紹介の「賤機焼」ギャラリーの詳細情報

賤機焼(しずはたやき)
静岡市葵区柳町の賤機焼ギャラリー兼工房「秋果陶房」

住所静岡県静岡市葵区柳町95
営業時間10:00〜17:00
※ご来店は電話かショートメールにて要予約
電話番号※お問い合わせは電話、または携帯のショートメール
054-271-2480
090-9197-9346
定休日不定休
体験時間およそ1時間程度
体験料大人3,300円(税込)〜
支払方法●現金
●paypay
駐車場無料駐車場あり
※4、5台分
アクセス バス JR静岡駅前より藁科線バス乗車約20分→「安西5丁目」下車→徒歩約3、4分

※本記事は2024年6月時点での情報です。

 

歴史を紐解きながらギャラリーに足を運ぶのも楽しい

賤機焼(しずはたやき)

今回お話を伺ったことで、静岡で生まれながら改めて新しい知識を吸収できたことがとても嬉しかった!
由緒ある賤機焼をじっくり見たり、土に触れたりと関わり方は人それぞれ。日常生活に使うやきものを「鬼福」の縁起にあやかってみるのも良いですよね。

静岡の歴史に立ち返りながら、魅力溢れるやきもの「賤機焼」にぜひ一度触れてみませんか。

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この記事を書いたひと

おかの めぐみ

おかの めぐみ

日本酒とバイクをこよなく愛する中年女子ライター。
北は青森、南は四国まで山超え谷越えのツーリングを体験。

ソロキャンプを織り交ぜながら、日本中の美味しいお酒と特産品を味わいたいという願いを叶えるため地道に活動中。

生まれ育った静岡の魅力をお伝えできるよう奮闘してまいります!

学びながら呑んだくれる日本酒ブログを更新中。

<日本酒にまつわるブログはこちら>