静岡市清水区|廃線跡の今と昔、遊歩道散策と遺構巡り
皆さんは過去に清水港沿いを走っていた鉄道路線「旧清水港線」をご存知でしょうか。
現在のJR清水駅から三保駅(現在の三保ふれあい広場)までを結ぶ路線で、営業時には港周辺の工場や貨物船への物流を支えていました。
筆者が生まれた頃には既に再開発が進んでおり、小学生時代に昭和初期生まれの祖父母や父親からの話で路線の存在を初めて知ったほど、当時から景色が変わっています。
今回の記事では、国鉄 廃線跡の遊歩道を散策しながら遺構巡りをした様子をお届けします。
このページの目次
貨物輸送で活躍した旧清水港線
旧清水港線は、現在の清水駅から旧三保駅までを結んでいた全長8.3kmの鉄道路線です。
開業したのは1916年7月10日。
当時は鉄道院が管理していました。
時代の流れと共に鉄道省や運輸省と所有者が変わり、最後は国鉄が所有したのちに1984年4月1日に廃止されます。
港に停泊する貨物船への荷物輸送と同時に旅客輸送の営業も行われていましたが、時代の流れでトラック輸送に切り替わると共に廃線となりました。
令和現在も隠れた遺構が残る
旧清水港線 遊歩道(2022年12月現在)
現在は一見痕跡が見当たらないほど再開発が進み、廃線跡は遊歩道として整備されています。
しかし、付近をよく見てみると僅かながら当時の痕跡が残っている場所もあります。
このような遺構は徒歩や自転車で訪れなければ見られません。
どれも車で移動する際には通過するだけの場所なので、一度徒歩や自転車でゆっくり訪れてみてはいかがでしょうか。
今まで気付かなかった風景や遺構を巡って当時の景色に想像力を膨らませるのも面白いですよ。
古い写真の撮影場所で風景を比較
旧清水港線の遺構巡りを紹介するにあたって、祖母の協力で興味深いものを用意してもらいました。
話を聞いてみると、筆者の父親が学生時代に撮影した写真(1970年~1984年頃)で当時の清水港線を撮影したものだそうです。
写真には海沿いにたくさんの線路が敷かれている様子や、見覚えのある景色や構造物も写っています。
そこで今回の遺構巡りと同時に、写真が撮影された場所へ訪れて当時の様子と現在の景色を比較してみたいと考えました。
果たして写真の場所はどのように変化したのか、タイムトラベルをするような気分でワクワクします。
清水駅東口(みなと口)からスタート
スタート地点は清水駅の東口です。
祖母が見せてくれた写真の1枚に清水港線のホームと貨物列車が写った写真がありました。
清水港線のホームと貨物列車(過去)
当時、清水港線が発着していたホームは現在のホームからやや離れており、スタート地点の近くに東海道本線とは別にホームが設置されていたようです。
廃止後に残された広大な敷地は整備され、現在は清水テルサや清水文化会館マリナートが並んでいます。
清水港線のホームと貨物列車(2022年12月現在)
写真と比べるとたくさんの線路と列車が停まっていた場所に立っているような感覚で不思議な気持ちです。
海沿いを走る臨海道路の歩道を南方向へ真っ直ぐ進むと廃線跡の遊歩道へと繋がっています。
エスパルスドリームプラザとテルファークレーン
遊歩道を進みエスパルスドリームプラザの海側へ到着しました。
ここで目を引かれるのがテルファークレーンの遺構です。
エスパルスドリームプラザとテルファークレーン(2022年12月現在)
ここは日本国有鉄道(国鉄)「清水港駅」だった場所で、貨物列車からクレーンを使って直接船に荷物を積み込んでいました。
当時から大きく変わった風景と変わらない建物が混ざり、時間の流れを感じさせる景色にも感じられます。
テルファークレーン (過去)
次の場所へ向かう前にエスパルスドリームプラザで小休憩。
館内1階部分には休憩に使えるスペースのほか、食事場所もあるので休憩も兼ねて寄り道におすすめの施設です。
エスパルスドリームプラザ横風景(過去)
エスパルスドリームプラザ横風景(2022年12月現在)
旧清水埠頭駅跡とフェルケール博物館
臨海道路に出て次の目的地へと向かいます。
港町交差点近くには浪漫館という建物が建っています。
実はここが日本国有鉄道(国鉄)「清水埠頭駅」の跡地で、当時の痕跡はほとんど残っていません。
向かいには清水港の歴史や資料が展示されているフェルケール博物館があり、ここでは当時の風景を再現した模型のジオラマや実際に使用されていた道具を見学できます。
フェルケール博物館(2022年12月現在)
ジオラマを見て驚いたのが、普段何気なく訪れていた岸壁を貨物列車が走る姿です。
こんな場所を機関車が走っていたのかと今の風景と照らし合わせても想像できません。
フェルケール博物館 「テルファークレーン展示パネル」
ほかにも、清水港の歴史にまつわる解説や珍しい缶詰のラベルといった展示物もあるので立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
旧巴川口駅近くでレールを発見
巴川の河口近くに掛かる羽衣橋が見えてきました。
羽衣橋(2022年12月現在)
かつては、河口側に可動橋が存在し列車が渡っていたようです。↓
川沿いの道に入り悪路に注意しつつ進むと地面に埋もれた線路が現れました。↓
線路の痕跡(2022年12月現在)
残念ながら可動橋の痕跡は見当たりませんが、線路の痕跡を発見です。
隣接する清水浄化センターが日本国有鉄道(国鉄)「巴川口駅」の跡地で、反対側に回ると巴川口駅のホームと線路の一部が保存されている様子が見られます。
当時の写真を見てみると駅の構内から工場へ伸びるたくさんの側線と列車の様子が分かります。
現在もたくさんの工場がありますが、廃線跡の遊歩道だけが空き地のように伸びている光景には寂しさを感じさせられました。
巴川口駅(2022年12月現在)
旧折戸駅跡~旧三保駅跡へ
村松交差点付近(2022年12月現在)
村松交差点付近から旧三保駅までは遊歩道が線路跡の形状がはっきりと感じられます。
三保方面へと曲がり折戸駅跡地の公園に辿り着きました。
旧折戸駅跡(2022年12月現在)
不自然に広がった地形が駅の面影を残しています。
後日、父親に当時のことを聞いてみると当時は付近の高校に通う学生がよく利用していたようですが、現在は目立たず静かな場所で寂しげな雰囲気が漂います。
「旧三保駅までの距離2500m」看板(2022年12月現在)
先へ進み今回のゴール地点旧三保駅跡(三保ふれあい広場)に到着です。
三保ふれあい広場(2022年12月現在)
敷地内には当時の機関車と貨物車両のほか、ホームの跡が残されていました。
「旧三保駅までの距離0m」看板(2022年12月現在)
実際にホーム跡へ上がれる場所は、旧清水港線跡でもここくらいです。
ホームに立ってみると今にも目の前の機関車が動き出しそうな光景です。
旧三保駅跡の機関車(2022年12月現在)
ご紹介の遺構 詳細情報
エスパルスドリームプラザ
住所 | 静岡市清水区入船町13-15 |
---|---|
電話 | 054-354-3360 (電話受付9:30〜18:30) |
営業時間 | 10:00~20:00 ※店舗によって異なります |
休業日 | 年中無休 ※場合によって不定休、年末年始など |
駐車場 | 有料駐車場あり 普通車1時間200円 |
駐輪スペース | 遊歩道近くの出入口付近にあり |
アクセス | バス ●【無料】JR清水駅~エスパするドリームプラザ間の無料シャトルバスの利用可能 ●【有料】静鉄バス三保山の手線「東海大学三保水族館/三保灯台」行き乗車→「波止場」下車→徒歩約1分 電車 JR清水駅東口から自転車で約6分 車 |
HP | https://www.dream-plaza.co.jp/ |
フェルケール博物館
住所 | 静岡市清水区港町2-8-11 |
---|---|
電話 | 054-352-8060 |
営業時間 | 9:30~16:30 |
閉館日 | 月曜日 ※祝祭日・振替休日の場合は開館 |
入場料・拝観料 | 大人400円 中高生300円 小学生200円 ※土曜日と「こどもの日」・「海の日」は小・中学生 無料 |
駐車場 | 無料駐車場あり |
アクセス | バス JR清水駅西口または新清水駅から路線バス乗車→「波止場フェルケール博物館」下車 電車 JR清水駅東口から自転車で約10分、徒歩で約23分 車 |
HP | https://www.verkehr-museum.jp/index.html |
まとめ
今回の記事では旧清水港線跡の遺構巡りをお届けしました。
父親が撮影した1970年~1984年当時の写真と比較しながら各地を回り、景色を重ねてみると当時の線路や機関車が走っていた雰囲気や痕跡が強く感じられます。
ここにはたくさん線路が敷かれていたのかと当時の様子を知らない筆者の想像力を刺激してくれました。
車では訪れにくい場所が多いので、自転車や路線バスを活用して皆さんも旧清水港線の遺構を探してみてください。
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