海から20mなのに淡水の池?大瀬崎神池が不思議すぎる

沼津市、駿河湾に突き出た大瀬崎。
その先端に、海からたった20mの場所に淡水の池がある。
鯉、鮒、鯰が何万匹も泳いでる。
完全な淡水で。海のすぐそばなのに。
大瀬崎神池
この不思議な池、「伊豆七不思議」の一つに数えられてて、1300年以上も人々を魅了し続けてる。今回は、この神秘的な池の魅力を全部伝えます。
このページの目次
海に囲まれた岬の先端に、なぜ淡水の池?

大瀬崎神池の最大の謎は、その水質。
周囲約300m、直径約100mの池。
外海からわずか20mという距離なのに、水は完全に淡水。
塩分ゼロ。
淡水魚が何万匹も泳いでる

池には、鯉、鮒、鯰といった純粋な淡水魚が数万匹も生息してます。
塩分に弱い淡水魚が、海に囲まれた環境でこれだけ大量に生きてるって、普通に考えたらありえない。
通常、海岸近くの低地では海水が地下を浸透して、淡水を押し上げちゃう。
でもこの池は違う。海水の浸透圧を上回るほどの、強大な地下水脈が深層から高圧で供給され続けてるんです。
だから「底なしの池」とも呼ばれてる。
淡水はどこから来てるのか?
この池の淡水、どこから来てるのか。
昔から、いくつかの伝承が語り継がれてます。
富士山からの地下水説

一つ目は、直線距離で約37km離れた富士山の湧水が、地下水脈を通じて流れ込んでるって説。
富士山周辺には、三島や柿田川に代表される大規模な地下水系がある。
古代の人々は、神池の異常なまでの水量と清浄さが、聖なる霊峰・富士山の力と結びついてると考えたんです。
神池の神聖さが、大瀬崎という場所を超えて、富士山とも繋がってる。
そう信じられてきた。
原地区の田植えで池が濁る?
もう一つの伝承は、もっと不思議。
沼津市原地区(内陸部の農耕地帯)で田植えが行われる時期になると、神池の水が濁るって言い伝えがあるんです。
もしこれが本当なら、神池の地下水脈は富士山からの深層水だけじゃなく、地域の農耕サイクルと連動する浅層の地下水とも繋がってるってこと。
神池が、地域全体の水利サイクルと神秘的に結びついてる証拠です。
天狗が守る神域、調査は厳禁

科学的に調査すれば、淡水の供給源なんて簡単にわかりそう。
でも、長きにわたり深層調査が進まない理由がある。
神罰が下るという伝承

神池は「神域」。その水の起源など「真意」を調査しようと下手に手を出すと、大瀬神社にいる天狗より天罰が下るという伝承が、厳格に守られてるんです。
この「神罰の恐怖」は、学者でさえ調査を忌避させるほどの文化的強制力を持ってる。
神社の拝殿には天狗の装飾があって、悪事を働く者へすぐに向かえるよう、その下駄が鳥居下に配備されてるという具体的な伝承まである。
信仰が守る自然保護システム
この伝承、実は神池を守る「自然保護システム」として機能してきました。
観光地化による環境負荷から池を保護し、神秘性を維持する。
天狗信仰が、結果的に1300年以上も神池を守り続けてるんです。
国土を引き寄せた神様?
大瀬神社の壮大な創世神話

神池を守る大瀬神社には、壮大な創世神話があります。
684年の大地震で島が出現
白鳳13年(684年)、大地震が発生。
この地震で海底が約900mも隆起して、「琵琶島」が出現したと記録されてます。
大瀬崎は、もともと海上に独立した島だった。
それが長い年月をかけて砂洲が形成されて、本土と繋がった陸繋島なんです。
古代の人々は、この突発的で大規模な地殻変動を、神の偉大な行為として捉えた。
土佐から土地を引き寄せた神
この大地震で多くの土地が海没した土佐国(現:高知県)では、「神がその土地を大瀬崎まで引いてきた」という伝説が言い伝えられた。
この神が、大瀬神社の主祭神引手力命(ヒキテチカラノミコト)。
国土を引き寄せ、地盤を安定化させる神として祀られました。
日本でここだけの神様
引手力命は、日本全国8万を超える神社の中で、この大瀬神社でのみ祀られてる極めて稀有な神。
地震で土地が沈むんじゃなくて隆起して安定したっていう奇跡が、この神を生んだ。国土の安寧と権力の確立を保証する、強力な存在として信仰されてきたんです。
源頼朝や北条政子も、源氏再興の祈願のために弓矢、兜、宗近の銘刀、御神鏡などを奉納して、再三参拝した記録が残ってます。
樹齢1000年超のビャクシン樹林
大瀬崎一帯は、百数十本のビャクシン(イブキの品種)におおわれた樹林が広がってます。
日本最北端の群生、国の天然記念物

このビャクシン樹林、実は日本の最北端に位置するビャクシンの群生。
自然発生のまま大規模に群生してる点は、全国的に見てもまれ。
昭和7年7月25日に国の天然記念物に指定されました。
境内には樹齢千年を超える老木が多数存在してて、中には樹齢千数百年以上で幹廻り6m以上の御神木も。
神社創建(684年)の時代、あるいはそれ以前からこの地に存在してる。神社の歴史的連続性を、自然科学的に裏付ける「生きた証人」です。
漁民の信仰が生んだ文化財
大瀬神社は古来より、駿河湾沿岸の漁民から海の守護神として厚い崇敬を集めてきた。
奉納漁船模型、県指定有形民俗文化財
船主が新造船を造る際に模型を作成して、海上安全と大漁を祈願して神社に奉納した奉納漁船模型。
明治から昭和にかけての駿河湾における木造船の形態や、漁民の信仰を知る上で極めて貴重な歴史的資料。海上安全を願う人々の赤い褌(ふんどし)や絵馬の奉納風習と併せて、昭和56年10月に県指定有形民俗文化財に指定されてます。
国土創成の神話性と、人々の生活に根差した信仰文化が交差する場所。それが大瀬崎です。
大瀬崎を構成する宝物まとめ
神池
- 海から20mなのに完全淡水
- 鯉・鮒・鯰が数万匹
- 伊豆七不思議の一つ
引手力命
- 国土を引き寄せた神
- 日本でここだけの神様
- 源頼朝も参拝した
ビャクシン樹林
- 国指定天然記念物(1932年)
- 日本最北端の群生
- 樹齢1000年超の古木多数
奉納漁船模型
- 県指定有形民俗文化財(1981年)
- 駿河湾漁業文化の記録
大瀬神社拝観情報
所在地 : 静岡県沼津市西浦大瀬
拝観時間 : 7:30頃〜15:00頃(土日は16:30頃まで)
拝観料 : 中学生以上100円、小学生50円
御朱印 : 神池への入場料受付にて書置き授与(300円)
駐車場 : 普通車300台
アクセス
伊豆箱根鉄道駿豆線「修善寺駅」から東海バスで約1時間
または沼津駅から車で約40分
1300年続く、生きた文化的景観
大瀬崎の魅力は、バラバラの観光スポットじゃない。
国土創成の神話 × 淡水の奇跡 × 1000年の樹林 × 漁民の信仰
これら全部が、一貫したストーリーで繋がってる「文化的景観」なんです。
684年の大地震で島が出現して、引手力命が祀られて、神池の淡水が神の恵みとして人々に信仰されて、千年のビャクシンが歴史を見守って、漁民が海上安全を祈り続けてきた場所です。
ぜひ一度立ち寄って、この不思議な光景を、ご自分の目で確認してみてください。
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