こんなところに、大井川の起点があった|静岡の命の水が生まれる場所
 
					休日、いつも見慣れた大井川を眺めながら、ふと思った。
「この水って、どこから来てるんだろう?」
静岡県民なら誰もが知っている大井川。
でも、その「起点」を実際に訪れたことがある人は、ほとんどいないんじゃないだろうか。
今回、特別な機会に恵まれ、畑薙ダムから先の一般車両が入れないエリアへと案内していただいた。目指すは、二軒小屋ロッヂ。
そこには、静岡を支える大井川の「本当の始まり」があった。
このページの目次
畑薙ダムの先へ—特別な道の向こう側
畑薙ダムを過ぎると、道は一般の人の車では入れないエリアになる。自転車や徒歩では行けるけれど、そこから先は、まさに「選ばれた者だけが見られる風景」だった。

案内していただきながら進む道の両側には、見渡す限りの紅葉が広がっていた。
黄色、オレンジ、深紅—秋の南アルプスが放つ色彩のグラデーションは、想像をはるかに超えていた。
「この先に、大井川の起点があるんです」
その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。
自然のど真ん中に、ひっそりと佇む看板
二軒小屋ロッヂ周辺に到着すると、そこには人工物らしい人工物がほとんどなかった。
リニア工事関連の施設はあるものの、景色を支配しているのは、ただただ手付かずの自然だった。

木々の間を抜け、足を進めていくと——
「一級河川 大井川 起点 静岡県」
青い看板が、静かに立っていた。

「ここが、あの大井川の起点なんだ」
その瞬間、言葉にできない感動がこみ上げてきた。
こんな深い山の中、標高3,000メートル級の南アルプスの懐に、静岡を支える命の水の源があったなんて。

看板の隣には、大井川水系の地図も掲示されていた。
間ノ岳(標高3,190m)から流れ出し、笹山、塩見岳、赤石岳といった名峰を縫うようにして、はるか遠く駿河湾へと注ぐ。
168kmの旅の、まさに「ゼロ地点」に立っている—そう実感した。
全くの自然のど真ん中で感じた、畏敬の念
周りを見渡すと、360度、山また山。人の手がほとんど入っていない原生林が、静かに息づいていた。

風が吹くたびに、紅葉した葉が舞い落ちる。
足元には、湧き出たばかりの清らかな水が流れている。
耳を澄ませば、遠くで鳥の声。
「なかなか見られる機会じゃないですよ」
案内してくださった方の言葉通り、これは本当に特別な体験だった。
普段、街で蛇口をひねれば当たり前に出てくる水。その「はじまりの場所」は、こんなにも遠く、こんなにも美しい場所にあったのだ。
大井川は、ただの川じゃない。
静岡の農業を支え、生活を潤し、文化を育んできた命の動脈だ。その起点に立つということは、自分たちの暮らしの根っこに触れるということだった。
帰り道、心に残った「ありがとう」
帰り道、車窓から見える紅葉は、行きとは違って見えた。
この山々に降った雨や雪が、何年もかけて地中を巡り、やがて湧き出して川となる。その水が、茶畑を潤し、田んぼを満たし、私たちの生活を支えている。
「大井川って、こんな場所から来ていたんだ」
その事実を知れたことが、何よりも嬉しかった。
静岡県民として、知っておきたいこと
大井川の起点は、南アルプス深部、標高3,000m級の山々に囲まれた秘境にある。
畑薙ダムから先は一般車両では入れないため、普段目にすることはほとんどない。
でも、だからこそ、そこには「静岡の原点」があった。
手付かずの自然。清らかな水。
1800万年をかけて刻まれた大地の鼓動。
もし機会があれば、ぜひ一度、この場所を訪れてほしい。
大井川の起点に立つことは、静岡で暮らすことの意味を、改めて教えてくれるはずだから。
基本情報
場所:静岡県 南アルプス深部 二軒小屋ロッヂ周辺
アクセス:畑薙ダムから先は一般車両通行不可(関係車両のみ)
※自転車・徒歩でのアクセスは可能
見頃:紅葉シーズン:10月中旬〜11月上旬
地理
- 大井川源流:間ノ岳(標高3,190m)
- 幹川流路延長:168km
- 流域面積:1,280km²
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